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タミー
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なお、苦言を呈しますと、『エンジニアにも分かる「アベノミクス」』と他者に解説しようとするにしては、基礎的な知識があやふやなように見受けられます。『スーパーインフレ』という単語は経済分野では適切ではありません。『公定歩合』は政策金利として使われなくなって長い年月が経っている上に、もはや単語としても使われていません。『インフレ率がゼロではない時に、日銀が政策金利の引き上げ/引き下げをした時に』とありますが、"インフレ率"がゼロではない時ではなく"政策金利"がゼロではない時に、です。人間ですので1,2の間違いはあるものでしょうが、短いコメント数個にしては多い上、特に最後のものは金融政策について語る場合には根本にも関わります。その他、問題点が http://www.anlyznews.com/2013/03/blog-post_19.html にも指摘されています。
どの発言をもとに『あの岩田規久男さんですら、これは市場心理の問題だと説明しています』と仰ってるのかわかりませんが、岩田氏は予想インフレ率がプラスに転じるかどうかを市場心理の問題"だけ"だとは述べていません。 岩田氏のインフレに対する考え方は著書「デフレと超円高」にある『貨幣供給が貨幣需要を上回って増加し続ければ、やがて、貨幣の実質価値は低下し続けるようになり、逆に、消費者物価は上昇し続ける、すなわち、インフレになる』というものです。そこで貨幣供給が貨幣需要を上回って増加し続けることにコミットすることで、消費者物価は上昇するという予想を与えるという方針です。これは市場の心理ではなく市場の合理性の問題です。だからこそ、消費者物価は上昇するという予想をより合理的にするためにコミットメントの力を強める日銀法改正に言及しています。 岩田氏のインフレに対する考え方自体を合理的でないとみなす経済学者が少なくないのは事実ですが、岩田氏は当然のことそれを合理的なものとしています。 なお、リフレの理論的代表者は岩田氏だけではありません。大きな理論的支柱となってきたクルーグマンの「It's Baaack」論文や、それを精緻化したウッドフォードらによれば、岩田氏のインフレに対する考え方自体を合理的でないとした上でも、市場心理の問題ではなく合理性によって、現在の株高も、ゼロ金利制約下でも金融政策によって現在の景気やインフレ率に影響を与えられることが導けます。それに従った簡単な説明が上述の2つです。そこでは非合理的な心理・ムードのようなものは一切重要な役割を担っておりません。
株高についても上と同様に説明できます。これまで中央銀行がゼロインフレをベストだと思っており、インフレ率がプラスになれば即座に引き締めに回ると思われていたのが、2%のインフレを目標とするようになったと思われるように変化すれば、(いつでも可能な)引き締めに回るまでの時間が長くなります。このように中央銀行はインフレ目標を操作することで、低金利が続く期間に対する「期待」を変化させることができます。低金利が続く期間が長くなると「期待」されるようになれば、将来の金利の平均に左右される長期金利は低下し、企業の将来収益の割引率が低下することで収益の割引現在価値の合計で株価は上昇します。さらに、低金利が続く期間が長くなると「期待」されるようになれば、キャリートレードのような低金利の日本円を売る戦略が成功する可能性が高まるので日本円を売られ、円安になります。この円安が企業の収益を増やすことで株高が起きるという経路もあります。輸出企業だけでなく輸入企業も株価が上がる理由の説明の一つは http://anond.hatelabo.jp/20130208195018 にあります。そしてこれらの流れにおいて、非合理的なムードのようなものは一切重要な役割を担っておりません。
公定歩合っていつの話ですか、というのはおいておきまして・・・ 中央銀行がコントロールできるのが政策金利だけであったとしても、それは現在の政策金利だけではありません。将来の政策金利についてもコントロールできます。中央銀行はやる気になればいつでも引き締めが出来るわけです。中央銀行がゼロインフレをベストだと思っており、インフレ率がプラスになれば即座に引き締めに回ると思われていれば、たとえ今がゼロ金利でもこわくて回収に時間のかかる投資をしない企業が出てきます。一方で2%のインフレを目標としていれば引き締めに回るまでの時間が長くなり、そのためより回収に時間のかかる"現在の"投資も増えます。このようにして中央銀行はインフレ目標を操作することで、低金利が続く期間に対する「期待」を変化させ、現在の投資、最終的には現在の景気や物価に影響を与えることができます。デフレ状態からインフレを起こすことも出来ます。そしてこの流れにおいて、非合理的なムードのようなものは一切重要な役割を担っておりません。
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Mar 20, 2013